廣瀬製紙株式会社

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ポリエステル不織布について

公開日:2024.12.03 更新日:2024.12.19

ポリエステル繊維は衣類やカーテンなどの原料としてよく利用される機能性に優れた化学繊維であり、不織布の原料としてもとても多く使われている素材です。この記事ではそんなポリエステル繊維を原料とした不織布の特徴や利点・欠点、用途、歴史などについて詳しく解説します。

*その他の不織布に使われる素材について詳しく知りたい場合はこちらをご参照ください
不織布に使用される素材の種類と特徴

ポリエステル不織布の特徴

ポリエステル不織布の特徴

ポリエステル不織布とは人工的に合成された化学繊維であるポリエステルを原料として作られた不織布です。その優れた機能性と比較的安価な原料コストを強みとして、フィルター・断熱材・電池のセパレータなどの産業用途の他、身近なところではマスクや包装紙などの用途に使用されています。

ポリエステル不織布はポリエステル繊維の機能的特徴を引き継いでいるため、一般的に次のような利点があります。

  1. ① 強くて硬くて歪みにくい
  2. ② 高融点で耐熱性が高い
  3. ③ 吸湿がほとんどないため、吸湿による物性や寸法の変化がほとんどない
  4. ④ 耐光性が良好なため日光による変色がほとんどない
  5. ⑤ 酸に強い
  6. ⑥ 絶縁性能が高い
  7. ⑦ 熱可塑性樹脂で、リサイクルができる

ポリエステル繊維の欠点としてはアルカリに弱いことや繰り返しの摩擦に弱いこと、接着性が良くないことなどが挙げられますが、不織布化する場合は工程を調整することでこれらの欠点を補うこともできます。

ポリエステルに似た素材としてはナイロンやポリプロピレンがあります。いずれも化学繊維に区分される素材で耐熱性や強度に優れるという特徴がありますが、ポリエステル繊維はこれら2つの繊維の良い所取りをしたようなバランスのいい性質をしています。

    ポリエステル ナイロン66 ポリプロピレン
引張強度 cN/dtex 4.6 5.0 4.8
初期引張抵抗度 cN/dtex 110 36 70
融点 260 260 170
水分率 0.5 5.0 0

*参考文献:やさしい産業用繊維の基礎知識 2011年 日刊工業新聞社

製法による機能の違い

ポリエステル不織布の主な製法には乾式法と湿式法の2種類があり、生産量が多いのは乾式法です。乾式法で製造した不織布は比較的強度と耐久性が高くなるため、素材としても高い強度を持つポリエステルの特徴を活かせる製法といえます。

湿式法では予め繊維化したポリエステルを液体に分散させた後、スクリーン上で濾過することによりシートを形成し、結合工程などを経て不織布へと加工します。湿式法ではポリエステル繊維の優れた特徴を活かしつつ均一で密度の高い不織布を作れることに加え、原料の太さや長さを調整することもできるため、用途に応じて柔軟に対応した不織布を作ることができます。

  乾式法 湿式法
繊維の向き 一方向に整列またはランダム ランダム
繊維の太さ 製造プロセスに依存する 原料次第で調整可能
繊維の長さ 長い 原料次第で調整可能
強度 高い 製造条件で調整可能
触感 柔らかい(布に近い) 硬い(紙に近い)
厚み 厚い 薄い

*不織布の製法についてもっと詳しく知りたい場合はこちらをご覧ください。
不織布の製造工程の種類と特徴

ポリエステルの構造と歴史

ポリエステルはポリアルコールと多価カルボン酸という2つの化合物を基本構成とした高分子の総称です。この2つの化合物の組み合わせを変えることで様々な種類のポリエステルを合成することができ、特に有名なのはペットボトルの原料にもなっているポリエチレンテレフタラートです。ちなみにPET(ペット)はポリエチレンテレフタラートの頭文字に由来していますが、ポリエステルの呼称としても一般的に使われています。

ポリエチレンテレフタラート繊維

このポリエチレンテレフタラート繊維が初めて発明されたのは1941年のイギリスだと言われており、その後ICI社とデュポン社によって産業化されました。日本では東レと帝人が1958年に生産を開始し、そのバランスのとれた繊維性能、製造の容易さ、低コストによって急速に需要が拡大し、現在では化学繊維全体の出荷量の70%以上を占めるまでの著しい成長を遂げています。

弊社(廣瀬製紙)もこのポリエステルの高い機能性にいち早く着目し、積極的に開発と量産化を進めてきました。1979年に100%ポリエステル不織布を開発し、1989 年には1 平方メートルあたり 5 グラムという、この時点では天然繊維を含めた紙の中で世界一薄い、超薄型軽量ポリエステル機能紙の製品化に成功しています。弊社の100%ポリエステル不織布は超高密度から低密度まで密度調整ができ、寸法安定性、樹脂含浸性などの特徴を備え、200℃の高温環境で使用される例もある高機能不織布です。これらのポリエステル不織布のラインナップはTHタイプという商品名で、お客様からも高いご評価を頂いています。

ポリエステルはリサイクル可能な素材

ポリエステルはリサイクル可能

ポリエステルは私たちの身の回りにたくさん使われているがゆえにゴミとして廃棄される量も多い素材です。そのためリサイクル技術の進化も著しく、経済産業省の調査によれば日本国内だけでも年間約38万トンのペットボトルが再資源化されています。再利用して作られたポリエステルは「リサイクルポリエステル」や「再生ポリエステル」と呼ばれており、ゴミを減らせるだけでなく石油の使用量や二酸化炭素の排出量も減らせる環境にやさしい素材として年々生産量が増加しています。

リサイクルポリエステルの繊維を作ることも可能で、現在では機能面でも通常のポリエステル繊維とほぼ同等のものが作れるようになりつつあります。リサイクルされて作られた繊維は再生繊維と呼ばれており、もちろん不織布の原料としても利用できます。弊社(廣瀬製紙)もリサイクルされたポリエステル100%の不織布を製造販売しています。

ポリエステル不織布の用途

ポリエステル不織布は食品や花の包装紙などの日常用途にも利用されていますが、割合としてはフィルター、土木農業資材、建築資材など、その優れた機能性を活かせる産業用途の方が多い傾向にあります。他にもメンブレンの支持体(フィルターに使う微細膜を支えることによって強度を高めるためのシート)として利用されるなど、ポリエステル不織布は私たちの身の回りの様々なところで活躍しています。

ポリエステル不織布の用途

ポリエステル不織布のことならお気軽にご相談ください

ポリエステル不織布は高い耐久性に耐熱性や耐酸性などを備え、かつ比較的安価な材料コストを強みとして世界中で生産量が増加している優秀な製品です。廣瀬製紙も1979年からいち早くこのポリエステル不織布の開発と量産をスタートさせており、常に世界トップクラスの技術を牽引し続けることをめざして実績とともに経験とノウハウを蓄積させてきました。

ポリエステル不織布について困りごとやご質問がありましたらお気軽にお寄せください。
弊社の専門チームが喜んでお答えさせて頂きます。

参考文献:やさしい産業用繊維の基礎知識 2011年 日刊工業新聞社
     繊維製品の資源循環システムをめぐる現状と課題 2023年 経済産業省