廣瀬製紙株式会社

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不織布に使用される素材の種類と特徴について

公開日:2024.09.09 更新日:2024.12.19

不織布は原料となる素材の繊維を絡み合わせることによってシート状に加工した布のことを指し、使用する素材の種類によって機能が異なるという特徴があります。この記事では、不織布の原料となる素材には具体的にどんなものがあり、各素材が不織布の機能にどのように影響するのかを詳しく見ていきたいと思います。

素材の分類と特徴

不織布に使用される素材は、大きく分類すると天然繊維と化学繊維の2種類があり、比較的多く使われるのはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンなどに代表される化学繊維です。これらの繊維はそれぞれ違う特徴を持っており、繊維の特徴は不織布の機能に直接的に影響を及ぼします。例えばポリエステルは熱に強い繊維ですので、ポリエステルを使った不織布は耐熱性能の高い不織布に仕上がります。
素材の選択は機能性だけではなく、手触りや人体に対する安全性などの様々な要因に影響するため、素材選びは不織布の設計において大変重要なポイントとなります。

では不織布に用いられる素材には具体的にどんなものがあるのか、天然繊維と化学繊維の分類ごとに詳しく見ていきたいと思います。

天然繊維

天然繊維はその名の通り、綿や麻などの自然由来の原料を用いた繊維です。天然繊維は化学物質を含まないことから食品や皮膚に直接触れる用途に適しており、主に使い捨てのオムツや包帯、衣類など、私たちの日常生活でよく目にする用途で多く使用されています。環境意識の高まりとともに注目が高まっている素材です。

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綿(コットン) コットン 吸水性が高く、柔らかくて肌に優しい素材です。通気性も良いため、おむつやサニタリーナプキン、ガーゼなどの肌に直接触れる用途によく用いられます。
竹 竹は成長が早いため、持続可能性の高い素材として知られています。抗菌性・吸湿性・速乾性に優れており、マスクやキッチンクロスなどの用途に使用されます。
麻(リネン・ジュート) リネン 高い強度と耐久性に加えて自然な風合いを出せる素材です。この特徴を活かしてエコバッグや家具の内装材などの用途のほか、土木・建築用の地盤改良材等にも用いられます。
ウール ウール 保温性と吸湿発散性に優れ、防火性も備えた素材です。断熱材や防音材、高級フェルト製品といった産業系に近い用途のほか、冬用の衣類などにもよく使われます。
シルク シルク 肌触りが良く、高級感を感じさせる素材です。吸湿性にも優れることから化粧品パッドや贈答用の包装材、高級衣類の裏地などに使われることが多い素材です。

化学繊維

次に化学繊維について見ていきたいと思います。化学繊維は天然繊維の逆で、人工的に作られた繊維です。天然繊維と比較すると耐熱性や耐薬品性、耐久性などの機能面に優れており、その高い機能性を活かして日用品だけでなく工業用途に至るまで幅広い分野の不織布に用いられています。
化学繊維は原料と製造プロセスの違いから合成繊維と再生繊維の2種類に分けることができます。合成繊維は石油ベースの原料から製造されるに対し、再生繊維は自然資源やリサイクル素材から作られる繊維のことを指します。

合成繊維

合成繊維は、主に石油ベースのポリマーを原料として人工的に作られる繊維のことを指します。代表的なものとしてはポリエステルやナイロンなどがあり、軽量で耐久性が高く、耐熱性や耐薬品性などに優れるため、自動車部品や、産業用のフィルターなどの高い機能性が求められる用途に対して合成繊維を使った不織布がよく使用されます。

合成繊維による不織布の主な種類と特徴・用途は以下の通りです。ここでは合成繊維に求められる特徴の1つである「耐熱性」に焦点を当て、耐熱性が低い順に上から並べてみました。特にポリイミドは極めて高い耐熱性を有しており、一般的には約400℃の高温にも耐えることができます。最も耐熱温度が低いとされるポリウレタンでも約100℃の耐熱性を有していることから、合成繊維全般がいかに耐熱性に優れているかがわかります。なお廣瀬製紙が主力とする不織布の多くもこれらの合成繊維を原料に使用しています。

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ポリウレタン(PU) ポリウレタン (PU) 伸縮性と通気性に優れた素材です。弾性のある包帯や伸縮性のある下着やスポーツウェアなどの用途によく利用されます。
ポリエチレン(PE) ポリエチレン (PE) 柔軟性があり、耐水性と耐薬品性にも優れています。比較的安価な素材のため、レジ袋や包装材料の他、防水シートや農業用フィルムなど大量生産を必要とする用途でよく使用される素材です。
ポリプロピレン(PP) ポリプロピレン (PP) 軽量で耐水性と耐化学性に優れた素材です。原料そのもののコストも比較的安価なため、医療用マスクやおむつ、サニタリーナプキンなど使い捨てで利用する用途に用いられることが多い素材です。
ポリエステル(PET) ポリエステル (PET) 高い強度と耐久性に加え、耐熱性と耐摩耗性にも優れる素材です。この機能性を活かしてカーテンなどの日用品以外にも自動車の内装材や各種フィルターの材料などの産業用途でも多く使用されており、廣瀬製紙の主力製品の1つでもあります。
ナイロン (ポリアミド) ナイロン (ポリアミド) 耐摩耗性、耐久性、耐熱性が高い素材です。産業用途で利用される高機能フィルターや、医療用ステッチ材料、高い耐久性が求められる衣類の用途などに使用されます。
ポリフェニレンサルファイド(PPS) ポリフェニレンサルファイド(PPS) 高温耐性に加えて耐薬品性と耐摩耗性に優れた素材です。この優れた耐薬品性を活かして排水処理用のフィルターや、耐熱性を活かして自動車部品の用途に使用されます。
ポリイミド ポリイミド 高温耐性と高い機械的強度、化学薬品耐性に加えて難燃性も持ち合わせた素材です。この高い耐久性を活かして電子機器の絶縁材料の他、航空宇宙産業用の熱シールドや防護服などに使われます。

再生繊維

再生繊維は、自然資源やリサイクルされた素材を原料にして人工的に作られる繊維を指します。代表的なものとしては植物由来のセルロースを原料とするレーヨンなどが挙げられ、天然繊維の持つ環境へのやさしさと合成繊維の持つ機能性や耐久性を兼ね備えた中間的な位置にあり、天然繊維由来の不織布同様、肌に直接触れる用途にもよく利用されます。資源の有効活用と環境保護の観点から、近年注目が高まっている素材です。

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レーヨン/ビスコース レーヨン/ビスコース 高い吸水性に柔らかさと肌触りの良さを兼ね備えた素材です。フェイスマスクのシートやウェットティッシュ、ガーゼ、包帯など、肌に直接触れる用途によく使用されます。
リヨセル リヨセル 吸湿性と強度に優れた素材です。こちらも衣類やタオル、ベッドリネンなどの肌に触れる用途によく用いられることに加え、産業用のフィルターなどにも一部利用されます。
アセテート アセテート 肌触りの良さに加えて光沢があり、ドレープ性が高いことが特徴の素材です。衣類の裏地、高級包装材、タバコのフィルターなどに利用されます。
再生ポリエステル 再生ポリエステル リサイクルされたペットボトルなどのポリエステル製品から製造される、耐久性が高い素材です。衣類やバッグ、靴、アウトドア用品などに使用されます。

不織布のことならお気軽にご相談ください

素材の選択は不織布の機能を設計する上でとても大切な要素であり、同じ不織布という呼び名であっても素材の種類によって柔らかさ、重さ、耐久性、耐熱性、耐薬品性などが全く異なる仕上がりになることをご理解頂けたかと思います。これらの素材は分散性や重さが異なるため、不織布に加工する工程においても素材ごとに製造プロセスを最適化する必要があり、高い技術力とノウハウが求められます。

こうした課題に対して、廣瀬製紙は日本で初めて合成繊維ビニロンを用いた湿式不織布の開発に成功した成果を基に、1958年に設立して以来60年以上にわたって不織布の研究開発を続けてきました。常に世界トップクラスの技術を牽引し続けることをめざして「100%合成繊維を使った不織布」や「世界一薄い抄紙技術(2g/m2ポリオレフィン繊維100%)」を有し、独自開発のエレクトロスピニング法によるナノファイバーを使った不織布や、リチウムイオン二次電池のセパレータ、機能性エアフィルター、医療用などの高機能不織布の分野を強みとして研究開発に取り組んでいます。

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