廣瀬製紙

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不織布(ふしょくふ)とは?
原料や製法に応じて変わる様々な機能と用途について

公開日:2024.04.12 更新日:2024.04.19

不織布の概要

不織布は、普通の布とは違う特別な方法で作られる布の一種です。例えば織物は糸を縦横に交互に織り合わせて作りますが、不織布は短い繊維や長い繊維をバラバラにまたは一定の方向に並べて、熱や化学的な方法、または押し付ける力を使って固めて作ります。この作り方のおかげで、不織布は水を通さない、空気を通す、強い力に耐えられるなどさまざまな特性を持つことができます。

不織布の形状と一般的な布の拡大写真を並べてみました。織物や編み物は繊維が規則的に並んでいるのに対して、不織布は繊維の向きがバラバラになっているのが分かります。

不織布
不織布
織物
織物
編み物
編み物

不織布の形状

不織布は薄いシートから厚みのあるマット状のものまで用途に応じて密度や厚みを選ぶことができます。表面の質感も製法によって大きく変わり、滑らかなものから粗いもの、柔らかいものまで幅広く対応可能です。滑らかな表面の不織布は肌触りが重視される用途に、粗い表面のものはグリップ性が求められる用途に適しています。また、繊維間に空隙を与えて通気性を持たせることで電池のセパレーターや農業用の育苗シート、医療用の分離シートやマスクなど、空気や液体を選択的に透過させるフィルタとして使用することもできます。

このように、不織布は形状に応じて多様な機能を持たせることができます。

滑らかなもの
滑らかなもの
粗いもの
荒いもの
通気性が高いもの
通気性が高いもの

不織布の製法と特徴

不織布の工程は、大きく分けて素材を繊維状の層にする工程と、それを接着(接合)する工程の2つに分けることができます。
シート形成の工程には湿式法・乾式法・紡糸直結法の3つがあるのに対し、接着工程には化学的接着法・熱的接着法・機械的接着法の3つがあり、これらを組み合わせることによって不織布は作られます。

繊維層の形成工程

分類 製法と特徴
湿式法 水中で繊維を分散させてシート状にし、水を抜いて乾燥させる製法です。均一で平滑な不織布が得られ、衛生材料などに使用されます。
乾式法 繊維が乾燥状態で処理される方法です。天然繊維や合成繊維を開繊機で開いてほぐし、エアーレイド技術やカード機械により繊維を一定の方向に配向したりランダムに分布させたりします。
紡糸直結法 繊維を直接紡糸しつつ繊維層を形成し、固定するプロセスを組み合わせたもので、代表的な製法としてスパンボンド法とメルトブロー法があります。どちらもポリマーを溶融して細い繊維として押し出し、空気中で冷却して繊維の層を形成した後に熱や圧力を用いて繊維を結合させる方法ですが、メルトブロー法の方がより細い繊維を作り出すことで繊維間の空隙を小さくできます。

接着工程

分類 製法と特徴
化学的接着法 接着剤やバインダーと呼ばれる化学物質を使用する接着方法です。繊維層に均一に接着剤を適用することで、強度と一体性を高めることができます。
熱的接着法 繊維層に熱と圧力を加えることで繊維同士を融合して結合させる方法です。熱が加わることで熱可塑性繊維が溶け、冷却により固まって他の繊維と結びつくことで繊維層を固定します。
機械的結合法 繊維同士を物理的に絡ませることによって結合させる方法で、代表的な方法として特殊な形状の針を使うニードルパンチ法と高圧の水流を使うスパンレース法があります。熱や化学処理を行わないため環境への負荷が少ない方法でもあります。

不織布の原料の種類

不織布を作るための原料には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、レーヨンなどの化学繊維がよく使われます。これらの繊維はそれぞれ違う特徴を持っており、例えばポリプロピレンは水に強くて丈夫なのに対してポリエステルは熱に強い繊維です。

また、環境に優しい選択として使い終わった後に自然に戻りやすい天然繊維を使った不織布もあります。
以下に天然繊維と化学繊維の代表的な種類ごとの特徴と主な用途をまとめました。

天然繊維

天然繊維を用いた不織布はエコフレンドリーな製品や皮膚に直接触れる用途に適しており、その自然由来の特性を生かした用途で使用されます。天然繊維の使用は環境意識の高まりとともに、不織布市場でも注目されているトレンドの一つです。

繊維の種類 写真 特徴と主な用途
綿(コットン) コットン 特徴: 高い吸水性、柔らかさ、肌に優しい、通気性が良い。
用途:おむつ、サニタリーナプキン、ガーゼ、包帯、化粧品用パッド、フェイスマスクシートなど。
竹 特徴: 抗菌性、吸湿性、速乾性に優れる。環境への負荷が少なく、成長が早いため持続可能。
用途:キッチンクロス、タオル、ウェットティッシュ、使い捨て衣類など。
麻(リネン・ジュート) リネン 特徴: 高い強度と耐久性、自然な風合い、環境負荷が低い。
用途:土木・建築用の地盤改良材、農業用マルチングシート、エコバッグ、家具の内装材など。
ウール ウール 特徴: 自然な保温性、吸湿発散性、防火性。
用途:断熱材、防音材、高級フェルト製品、冬季用衣類など。
シルク   特徴: 高級感、優れた吸湿性、肌触りが良い、軽量。
用途:高級化粧品パッド、贈答用包装材、高級衣類の裏地など。

化学繊維

化学繊維は、その多様な性質を活かして日常生活から工業用途に至るまで幅広い分野の不織布の製造に広く用いられます。化学繊維は大きく合成繊維と再生繊維の2種類に分けられます。

合成繊維

合成繊維は、主に石油ベースのポリマーを原料として人工的に作られる繊維です。ポリエステルやナイロンがその例で、軽量かつ耐久性、耐水性、および耐化学性などの優れた機能性が特徴です。

繊維の種類 写真 特徴と主な用途
ポリプロピレン (PP) ポリプロピレン (PP) 特徴: 軽量、耐水性、耐化学性に優れる。低コスト。
用途:医療用マスク、ガウン、農業用カバー、ショッピングバッグ、おむつ、サニタリーナプキン。
ポリエステル (PET) ポリエステル (PET) 特徴: 強度と耐久性が高い。耐熱性、耐摩耗性に優れる。
用途:自動車内装材、フィルター材料、地盤工学材料、テーブルクロス、カーテン。
ポリエチレン (PE) ポリエチレン (PE) 特徴: 柔軟性があり、耐水性、耐化学性に優れる。
用途:包装材料、防水シート、農業用フィルム。
ポリフェニレンサルファイド(PPS) ポリフェニレンサルファイド(PPS) 特徴: 高温耐性、化学薬品耐性、耐摩耗性に優れる。
用途:化学的安定性が必要なフィルターや耐熱が求められる自動車部品。
ナイロン (ポリアミド) ナイロン (ポリアミド) 特徴: 耐摩耗性、耐久性、耐熱性が高い。
用途:高性能フィルター、医療用ステッチ材料、高耐久衣類。
ポリイミド ポリイミド 特徴: 高温耐性、機械的強度、化学薬品耐性、難燃性。
用途:電子機器の絶縁材料、航空宇宙産業用の熱シールド、防護服。
ポリウレタン (PU) ポリウレタン (PU) 特徴: 高温耐性、機械的強度、化学薬品耐性、難燃性。
用途:電子機器の絶縁材料、航空宇宙産業用の熱シールド、防護服。

再生繊維

再生繊維は、自然資源やリサイクルされた素材から作られる繊維です。代表的な原料としては植物のセルロースを原料とするレーヨンなどが挙げられ、天然繊維の持つ環境へのやさしさと合成繊維の持つ機能性や耐久性を兼ね備えた中間的な位置にあります。資源の有効活用と環境保護の観点から注目されている素材です。

繊維の種類 写真 特徴と主な用途
レーヨン/ビスコース レーヨン/ビスコース 特徴: 高い吸水性、柔らかさ、肌触りが良い。
用途:フェイスマスクシート、ウェットティッシュ、ガーゼ、包帯。
リヨセル   特徴: 生産過程で使用される溶剤がほぼ完全に回収・再利用されるため環境負荷が低く、吸湿性 と強度が高い。
用途:衣類、タオル、ベッドリネン、産業用フィルター。
アセテート   特徴: 光沢があり、ドレープ性が高い。肌触りが良い。
用途:衣類の裏地、高級包装材、タバコのフィルター。
再生ポリエステル   特徴:リサイクルされたペットボトルなどのポリエステル製品から製造され、耐久性が高い。
用途:衣類、バッグ、靴、アウトドア用品。

不織布のことならお気軽にご相談ください

不織布は製法と原料によって特徴や機能が大きく変わるため、目的に応じた機能をどう実現するかがとても難しい課題です。

こうした課題に対して、廣瀬製紙は日本で初めて合成繊維ビニロンを用いた湿式不織布の開発に成功した成果を基に、1958年に設立して以来60年以上にわたって不織布の研究開発を続けてきました。常に世界トップクラスの技術を牽引し続けることをめざして「100%合成繊維を使った不織布」や「世界一薄い抄紙技術(2g/m2ポリオレフィン繊維100%)」を有し、独自開発のエレクトロスピニング法によるナノファイバーを使った不織布や、リチウムイオン二次電池のセパレータ、機能性エアフィルター、医療用などの幅広い分野の研究開発に取り組んでいます。

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