よさこいがつなぐ絆と成長―よさこい祭りの魅力

目次
県外出身者の目に映った、よさこいの特別な景色
私がよさこいと出会ったのは、大学時代のことでした。通っていた大学に学内よさこいチームがあり、その活動を目にするうちに自然と興味が湧いてきたのです。最初は「踊りなんて自分には無縁だろう」と思っていましたが、実際に参加してみると、その魅力にすっかり引き込まれてしまいました。
よさこいの魅力を語る上で、私は高知県出身ではないからこそ見えた景色があると感じています。県外出身者の目線で最もうらやましく思うのは、よさこいを通じて生まれる人とのつながりです。高知の人たちを見ていると、小学校や中学校で一度は途切れてしまった友人関係が、よさこい祭りを機に再び結ばれていく光景をよく目にします。
「あの時のクラスメイトが、今年は違うチームで踊ってるよ」
「久しぶりに会えた!」
そんな再会の喜びが会場のあちこちで生まれているのです。地元の方にとっては当たり前の光景かもしれませんが、県外から来た私にはとても羨ましく、同時によさこいの持つ特別な力を感じる瞬間でもあります。
そして何より、よさこい祭りには「誰もが主役になれる」という素晴らしさがあります。年齢も職業も関係なく、鳴子を手にして踊り始めれば、その瞬間からあなたも立派な主役です。観客の視線を一身に受け、拍手や声援に包まれる体験は、日常生活ではなかなか味わえない特別なものです。この「みんなが主役」という精神こそが、よさこい祭りが多くの人に愛され続ける理由なのではないでしょうか。
地域に根ざし、全力で踊る。祭屋というチームの魅力
祭屋は2010年に安芸市を盛り上げるために結成された、若者が主体となって活動するよさこいチームです。安芸市だけでなく田野町や高知市にも拠点を置き、本場高知のよさこい文化を次の世代へ大切に受け継いでいくことを大きな使命としています。特に地元の子供たちに、大人になるまでに一度はよさこいの鳴子踊りを体験してもらいたいという想いを込めて活動を続けており、地域に根ざした文化の継承に真剣に取り組んでいます。
祭屋の最大の特色は、男踊りと女踊りがはっきりと区別されていることです。よさこい全体を見渡すと女性の参加者が多い傾向にありますが、祭屋では男性もしっかりと踊る機会が用意されており、性別に関係なく誰もが主役として輝ける環境が整っています。チーム名に「祭」の文字が入っていることからもわかるように、激しくダイナミックな振り付けが大きな魅力となっており、思いっきり体を動かして盛り上がりたい人にはまさにぴったりのチームといえるでしょう。
また祭屋は、ただ楽しく踊るだけではなく、上位入賞という明確な目標に向かって練習に励んでいるチームでもあります。2019,23年にはよさこい祭りの地区競演場連合会奨励賞を受賞し、2024年には審査員特別賞、今回2025年では地区競演場連合会奨励賞を受賞するなど、確かな実力を積み重ねています。楽しさの中にも適度な緊張感があり、みんなで一つの目標に向かって真剣に取り組む姿勢が、チーム全体に良いメリハリを生み出しています。この「楽しむ時は思いっきり楽しみ、練習する時は集中して頑張る」という雰囲気が、多くの参加者から愛される理由の一つとなっているのです。
教えることの難しさと喜び―今年のよさこいを振り返って
今年のよさこい祭りは、残念ながら雨に見舞われてしまいました。せっかくの晴れ舞台なのに…と心配していたのですが、意外にも踊り終えてみると疲労感がそれほどなく、むしろ「えっ、もう終わり?」と物足りなさを感じるほどでした。雨のおかげで涼しかったのかもしれませんね。
ただ、女性の踊り子さんたちは雨の中でのメイク直しが本当に大変そうで…。髪型も乱れやすいし、衣装も濡れてしまうし、見ているだけでも気の毒でした。そんな時、男性で良かったなと思ってしまいました(笑)。シンプルな身支度で済むのは、こういう時にありがたいものです。
今年は特に印象深い年になりました。というのも、これまで踊り子として参加していた私が、今回初めて新しいメンバーに踊りを教える立場になったんです。踊り子時代ももちろん楽しかったのですが、どうしても仲の良い友人同士で固まりがちで、コミュニケーションの範囲が限られていました。
でも教える側に回ると、本当にいろいろな人と話す機会が生まれるんですね。年齢も職業もバラバラの新しいメンバーと接することで、今まで知らなかった世界を垣間見ることができました。よさこいを通じて人とのつながりが広がっていく感覚は、何とも言えない喜びがあります。
とはいえ、教えることの難しさも痛感しました。よさこいに興味を持って参加してくれる人たちですが、それぞれに個性やクセがあるんです。特に印象的だったのは、リズム感を掴むのが苦手な方への指導でした。自分では当たり前にできることでも、相手の立場に立って分かりやすく伝えるのは思った以上に大変で…。どんな言葉を使えば伝わるか、どんな例えなら理解してもらえるか、毎回試行錯誤の連続でした。でもその分、相手が「できた!」という瞬間を一緒に味わえた時の嬉しさは格別でしたね。


地区競演場連合会奨励賞受賞―喜びと悔しさの間で
今年のよさこい祭りでは、発表の瞬間がいつもより遅く、会場にはなんとも言えない緊張感が漂っていました。「まだ発表がないの?」「もしかして受賞できなかったんじゃないか…」そんな不安がメンバーの間を駆け巡り、みんなそわそわとした表情で結果を待っていたのを覚えています。
そして、ついに地区競演場連合会奨励賞受賞の知らせが届いた瞬間、会場の空気が一変しました。歓声が上がり、仲間同士で抱き合う姿があちこちで見られ、中には感動で涙を流すメンバーもいました。一年間かけて準備してきた努力が報われた瞬間でした。
ただ、正直なところ複雑な気持ちもありました。私たちが目標としていたのは銀賞だったからです。もちろん受賞できたことは本当に嬉しく、誇らしい気持ちでいっぱいでしたが、同時に「あと一歩だったのに」という悔しさも感じていました。
今回の祭屋の踊りは「喝采」をテーマに構成しました。見ている人が思わず手を叩いてしまうような、心の底から「祭り」を感じられる踊りを目指したのです。観客の皆さんが自然と拍手喝采してくださる瞬間を何度も目にして、私たちの想いが伝わっていることを実感できました。この経験は、来年への大きなエネルギーになっています。

最後に
今年で第72回を迎えたよさこい祭りですが、高知の夏の風物詩として今後も開催されることかと思います。
もし少しでもよさこいが気になっている!であったり、周りの友人が「踊る!」といった機会があったりしたら是非一度踊ってみることをお勧めします。
きっと忘れられない夏になること間違いなし!!