廣瀬製紙株式会社

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【DX奮闘記】地方の中小企業でDX化推進を目指す!

公開日:2025.01.23 更新日:2025.02.01
SOFTWAREと書かれたイラスト

担当者が考える、DXに対する想い

廣瀬製紙株式会社 稼働率向上PJチームのA.Mと申します。
私は元々Web系のSEとして働いていましたが、現在は当社の稼働率向上プロジェクトチームに所属しています。
製造業の現場に身を置いてみると、DX化はもちろんのこと、その前段階であるIT化による業務効率化など、取り組むべき課題が山積みの状態です。

廣瀬製紙株式会社に転職してきてまだ2ヵ月あまり。そんな新参者のDX担当者が思う、DXに関する思いを本日は綴らせていただこうと思います。
なお、所属する会社の見解ではなく、あくまでいち担当者による未来への希望に満ちたポエムのようなものだと、生温かい目で見守っていただけますと幸いです。

目指すは「ソフトウェアに強い企業体質」

日々の業務の中で、データの収集や分析、工程管理の効率化など、小さな改善案件は次々と浮かんできます。しかし、私が本当に実現したいと考えているのは、もっと大きな目標です。それは「ソフトウェアに強い企業体質を作る」ということです。
これは単にシステムを導入したり、デジタル化を進めたりするだけの話ではありません。

まず第一には、私のようなシステムを専門としたチームが、必要に応じて自社でソフトウェアを開発できる技術力を身に着けること。そしてその技術力を高めていき、難しい課題でも解決できるようになることが必要です。

そして第二には、社員一人一人がデジタルツールを使いこなし、データに基づいた意思決定ができる組織を作ることです。

まだ道のりは長く、具体的な成果を上げられているわけではありません。しかし、あらためて強調したいことは、たとえ製造業であってもソフトウェアの力を活用できなければ、今後の競争に勝ち残ることは難しいと確信しているということです。

ソフトウェア、開発してますか?

製造業の現場で「ソフトウェア開発」という言葉を聞くと、多くの方が違和感を覚えるのではないでしょうか。確かに、従来の製造業では生産設備の導入や品質管理が最重要課題であり、ソフトウェア開発などは「IT企業がやることでしょう」と他人事のように感じられていました。
実際、私が製造業に勤める知人友人に話を聞いても「うちはモノづくりの会社だから…」という声をよく耳にします。ERPパッケージの導入や、生産管理システムの更新といったIT投資は行っているものの、それらは「必要に迫られて」「仕方なく」という受け身の姿勢が大半です。

しかし、このような「ソフトウェアは他人事」という考え方が、実は企業の将来に大きなリスクをもたらす可能性があります。なぜなら、現代のビジネス環境において、ソフトウェアは単なるツールではなく、企業の競争力を左右する重要な経営資源となっているからです。

たとえば、生産現場のデータをリアルタイムで収集・分析し、生産効率を最適化する。取引先とのやり取りをデジタル化し、リードタイムを短縮する。従業員の暗黙知をデジタル化し、ナレッジとして共有する。これらはすべて、ソフトウェアを介して実現される価値です。

つまり、「ソフトウェア開発」とは、必ずしも最先端のアプリケーションを作ることではありません。自社の業務プロセスを深く理解し、それをデジタルの力で進化させていく。それこそが、製造業に求められる「ソフトウェア開発」の本質なのです。

Why Software Is Eating the World

Marc Andreesenが2011年に発表したエッセイ「Why Software Is Eating the World」は、今なお多くの経営者やIT専門家に強い影響を与え続けています。
このエッセイでAndreesenは、ソフトウェアが世界中のあらゆる産業を「飲み込んでいく」という衝撃的な予測を示しました。当時はやや大げさな表現に思えたかもしれません。しかし今、私たちの目の前でその予言が着実に現実となっています。

例えば、書店はAmazonに、CDショップはSpotifyに、タクシー配車はUberに。伝統的な産業が、ソフトウェアを核とした新しいビジネスモデルによって次々と置き換えられています。さらに製造業においても、生産管理や品質管理、サプライチェーン全体をソフトウェアで最適化する動きが加速しています。
特に注目すべきは、Andreesenが「ソフトウェアを制する者が産業を制する」という本質を見抜いていた点です。つまり、どんな業界であってもソフトウェアへの理解と活用なしには、もはや競争力を維持できない時代に突入したということです。

私たち製造業にとって、この警告は重く受け止めるべきものです。「うちはモノづくりの会社だから」という言い訳は、もはや通用しません。ソフトウェアを理解し、活用する企業体質への転換(DX)に向けて、具体的な一歩を踏み出す時が来ているのです。
いえ、このエッセイが書かれた2011年には来ていたのです。
しかし14年経った今でさえ、このエッセイに書かれていた内容は未だ真実であり続けています。

ソフトウェアに強い企業体質がなぜ大切か?

前述した通り、あらゆる産業でソフトウェアの重要性が増しています。私たちのような製造業も例外ではありません。

DX化というと、特定の課題に対してシステムを導入したり、デジタル化を進めたりすることだと考えがちです。しかし、それは本質的なDX化とは言えません。なぜなら、ビジネス環境は常に変化しており、新しい課題や機会が次々と生まれるからです。

たとえば、生産管理システムを導入して在庫管理の効率化を実現したとしても、それで終わりではありません。市場ニーズの変化や新しい製造技術の登場により、システムの改善や拡張が必要になるかもしれません。
もちろん自社ですべて開発しなくとも、システムの外注やパッケージソフトの導入をすることは重要な選択肢のひとつです。ですが問題は、外部のベンダーやパッケージに依存しきってしまい、システムの担当者が自社の技術力を磨く機会も得られず、会社としての開発力を高めることができない、もしくは落としてしまうということです。
それらを自社でコントロールできる力がなければ、本当の意味での競争力にはなりません。自社内にソフトウェアを理解し、活用できる人材を育て、継続的な改善のサイクルを回していく。そうした「ソフトウェアに強い企業体質」こそが、真のDX化には不可欠なのです。

私たち廣瀬製紙株式会社も、品質管理や環境対応など、ソフトウェアの力で解決できる課題が山積みです。これからの時代、ソフトウェアへの理解と活用力は、企業の生存を左右する重要な要素となるでしょう。

AIによりソフトウェア開発のハードルはかつてなく下がっている

昨今のAI技術の進歩により、ソフトウェア開発の世界は大きな転換期を迎えています。特にChatGPTのような生成AIの登場により、プログラミングの経験が浅い人でも、基本的なコードを短時間で生成できるようになりました。
たとえば、ExcelのVBAマクロや簡単なPythonスクリプトであれば、やりたいことを自然言語で説明するだけで、AIが実用的なコードを提案してくれます。もちろん、そのコードが必ずしも最適解とは限りませんが、「とりあえず動く」レベルのものを素早く作れることは、業務効率化において大きな武器となります。

従来のソフトウェア開発では、システムの保守性や拡張性を考慮して慎重に設計を行う必要がありました。しかし、一時的な業務効率化や特定の課題解決のために作るコードであれば、完璧な設計にこだわる必要はありません。必要に応じて作り直せばよいのです。

このような「使い捨てコード」の生成が容易になったことで、自然と開発サイクルは高速化されていっています。
設計にたっぷりと時間をかけ完璧な仕様書を作り細心の注意を払って慎重に開発をすすめるよりは、設計には不備がありバグは生まれるものという前提で、最初から破棄する前提で作るほうが良いのです。いったんは不出来なものを作ってしまっても、破棄して作り直すことでバージョン1よりもずっといいシステムができるはずです。

このような開発サイクルの高速化は、企業にとって大きなチャンスとなります。たとえば、現場で発生した課題に対して、その日のうちに簡単な自動化ツールを作成して対応する。そして、より良いアイデアが浮かんだら躊躇なく作り直す。このような試行錯誤を重ねることで、組織全体のデジタル対応力が自然と向上していくはずです。

もちろん、堅牢なアーキテクチャに基づいたシステム開発には依然として専門的な知識とスキルが必要です。しかし、AIを活用した「小さな」ソフトウェア開発から始めることで、組織全体のITリテラシーを段階的に高められる時代が来ているのです。

終わりに

私は、まだ廣瀬製紙に入社して間もない新参者です。これまでの歴史ある和紙製造の技術と、最新のデジタル技術を融合させていくという大きな挑戦に、時に不安を感じることもあります。しかし、ソフトウェアの力で企業を変革できるという確信と情熱は、日々強くなっています。

私たちの会社には、長年培ってきた確かな技術力があります。その技術を活かしながら、新しいデジタルの風を吹き込んでいく。それは決して簡単な道のりではありませんが、一歩一歩着実に進んでいきたいと考えています。

ソフトウェアは単なるツールではありません。それは、私たちの仕事の在り方を根本から変え、新しい価値を生み出す可能性を秘めています。この想いを社内で共有しながら、廣瀬製紙のDX推進に全力で取り組んでいく所存です。

まだ道半ばではありますが、この記事を読んでくださった方々にも、私たちの挑戦を温かく見守っていただければ幸いです。廣瀬製紙の新しい章を、皆様とともに紡いでいけることを楽しみにしています。