燃料フィルターに最適な、高耐油性を備えたシート素材とは?

不織布はフィルター用途に適した材料として知られています。しかしナイロン不織布などをガソリン等の燃料用フィルターとして使用した際、強度低下してしまいお困りになった経験はないでしょうか?この記事では燃料に長時間晒されても劣化しない高機能素材と、その不織布化の成功により実現した燃料用途に最適なフィルターについて解説します。
目次
ガソリン等の燃料に高い耐性のあるポリアセタール
耐油性に優れ、燃料用フィルターとして最適な素材の1つとしてポリアセタール(Polyoxymethylene, POM)があります。POMは高い耐薬品性能を有し、特に有機溶剤、ガソリン、グリース、合成洗剤などへの耐性は特に高く、塩酸、硫酸などの強酸を除いて強い耐性を持っています。そのため、従来のナイロンやポリエステル製不織布では劣化してしまうような薬品・燃料環境下でも長期間性能を維持できる優れた材料です。-(CH₂-O)-の繰り返し構造を持っており、工業的にはホルムアルデヒドの三量体であるトリオキサンを酸触媒下で重合し、末端に安定基を導入して熱安定性を持たせる方法などによって製造されます。
表1に、耐薬品性に優れる主な素材の比較を記しました。POMの総合的な耐薬品性能がいかに優れているかがお分かりいただけると思います。
| 種類 | POM | PA66 | PPE | PBT | PC |
|---|---|---|---|---|---|
| 耐油性 | ◎ | ◎ | △~× | ◎ | △~× |
| 耐有機溶剤性 | ◎ | ◎ | △~× | ◎ | △~× |
| 耐酸性(低濃度) | ○~△ | – | ◎ | ◎ | ○~△ |
| 耐アルカリ性(高濃度) | ○~△ | ○~△ | ◎ | △~× | △~× |
◎:侵されない、○:ほとんど侵されない、△:条件によっては侵される、×:侵される
(表1)耐薬品性の比較データ
ポリアセタールを用いた高耐油性不織布フィルター
この優れた耐薬品性能を有するPOMを湿式不織布化すると、基材となるPOMの特徴と不織布構造の利点の両方を兼ね備えた燃料フィルター用途に最適な高機能シート素材になります。以下にPOM不織布の特徴を項目ごとにまとめました。
耐油・耐有機溶剤性
前述の通り、POMはガソリンやアルコール、油剤などに侵されず、酸やアルカリにも一定の耐性があります。有機溶剤、ガソリン、グリース、合成洗剤などへの耐性は特に高く、塩酸、硫酸などの強酸を除いて強い耐性を持っています。このため、従来のナイロンやポリエステル製不織布では劣化してしまうような薬品・燃料環境下でも長期間性能を維持できます。
耐熱性
POMの融点は175℃、 連続使用温度はホモポリマー約85℃、コポリマー約105℃で、短時間なら150℃近くまで耐えます。不織布化しても、このPOMの耐熱性は維持されます。

高強度・高耐久
POMは繊維自体が非常に強靭で疲労しにくいため、POM繊維100%で構成される不織布シートも引張強度・引裂強度等に優れており、繰り返しの曲げや摩擦にも耐えることができます。この特徴を引き継いだPOM不織布は、擦れや曲げが発生する用途でも毛羽立ちや摩耗粉の発生が少ないことが期待されます
低吸水性、抗菌性・防カビ性
吸水しにくい繊維であるため不織布も水分を含みにくく、速乾性も高いことからカビや細菌などが付着しにくく、繁殖もしにくいという利点があります。このため抗菌性や防カビ性が期待でき、衛生面で優れます。
透湿性・防水性
繊維間に無数の細かな空隙を持つシート構造のため空気や水蒸気は通しやすく、一方でPOM繊維には撥水性があるため液体の水は染み込みにくい性質があります。
ポリアセタール不織布のその他の用途

このように多方面で優れた機能的特徴を持つPOM不織布は、多様な産業分野で活躍できる可能性を秘めています。冒頭に述べた自動車や産業機械の燃料フィルター用途は特に有望で、ガソリン等の燃料に長期間さらされても劣化しないフィルター素材としての利用が期待されます。また、耐薬品・耐熱性を生かして特殊な化学薬品フィルターや空調フィルター、クリーンルーム用の高性能フィルターなどにも適していると考えられます。
他には、低吸湿性で衛生的な特性から医療用不織布製品(例えば高耐久なガウン、医療用フィルター、滅菌可能なマスクやフィルターカートリッジなど)への応用も考えられます。工業用途では高強度を活かしたシート材や絶縁シート、耐薬品性を活かしたフィルターエレメントや分離膜、耐摩耗性の必要な研磨用不織布(工業用ワイパーやバフ)など、新市場の素材となる可能性があります。
ポリアセタール不織布がこれまで量産されなかった理由
ではなぜこれまで、POMは燃料用のフィルターとして使われてこなかったのでしょうか?それはPOMの物質的な特徴に理由があります。POMは結晶化速度が非常に速く、一度溶融して押出しても冷却過程で急速に結晶化するため繊維を細く引き伸ばす(延伸する)工程で糸切れや脆化が起こりやすいという特徴があります。また融点が高く熱融着の温度域が狭い上に過熱すると熱分解してホルムアルデヒドガスを発生するという扱いの難しさがあり、仮に繊維化できても疎水性かつ比重が1.4と重いためシート化するための前工程である均一分散が難しいという問題もあります。
これらの問題を克服するためにはポリマーの改良(分子構造や分子量、組成等の改良)や繊維化や抄紙の加工条件の最適化が必須であり、この難易度の高さからこれまで不織布の製造には用いられてきませんでした。しかし、当社は関係各社のご協力によってこうした困難を乗り越えて、世界で初めてPOM樹脂100%からなる湿式不織布の実用化に成功いたしました。
まとめ
廣瀬製紙が世界で初めて実用化したPOM100% の湿式不織布は、POMの優れた機械特性、耐熱性、耐薬品性、低吸湿性や抗菌性等の性質と湿式不織布の機能性を合わせ持っており、この不織布を用いることでガソリン等のフィルター、分離膜、医療用不織布、研磨用不織布等の産業資材など幅広い分野でのイノベーションが期待されます。
弊社では、このPOM不織布を提供することが可能ですので、ご興味があれば、ぜひ、一度ご相談ください。弊社の専門チームがご対応させて頂きます。その他の不織布に関するお問い合わせもお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。
